Now or Never

今でしょ!

エール音響

新橋の住人氏が、スピーカーの修理依頼に、我が家から程近いところにあるオーディオ屋に行くというので、ハイエンドと呼ばれる機種を体験に、いっしょにお邪魔することにしました。
この店の名前は初耳で、こんな近くで営業していることも全く知らず、何の前提知識もないままの訪問です。

ハイエンドのオーディオが聴けるというので、広くて高級感漂うリスニングルームで、ふかふかのソファーに腰を沈めて音楽が楽しめる!
ウキウキモードで訪れて見ると、、、

外見は倉庫のようです。

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小ぶりな看板。これは、何百回と車で通っても気付かないわけだ。

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「これが入口かな。。。」と、訝しくも倉庫の扉の戸口を開けてくぐってみると、

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町工場だあ~

いやー、びっくり😮
想像していた部屋とは180度異なる、これっぽっちも想像していなかった様相の部屋がそこにありました。

良く見れば、ところどころ壁からこぼれる外光。
うっすらと錆びて、水漏れしていることを窺わせるトタンの壁。

無造作に置かれているように見えるこのシステム、スピーカーだけで約500諭吉也。

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こちらを向かれているのが、エール音響代表の遠藤さんです。

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最初に「こちらは機器の修理をメインにやっているんですか?」と質問すると、少々たじろかれたように見えました😅

その後にいろいろとお話をさせていただいてわかったことですが、エール音響の前身「YL音響」は、その昔日本の音響メーカのトップリーダで、東京通信工業株式会社(現ソニー)、福音電機株式会社(現パイオニア)と肩を並べる存在だったそうです。
また、日本におけるホーン型スピーカーの先駆けと胸をはっておられました。

エール音響は、YL音響の工場長だった遠藤氏が立ち上げたホーン型スピーカーを製造・販売するメーカーでした。

ここは、単なる営業の場所ではなく、スピーカーを製造する工場だったのです。

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それからは、新橋の住人氏が持参したCDを視聴しながら、いろいろなお話をさせていただきました。
「オーディオは素人なんで」とお断りすると、厭な顔も見せずに貴重な知見や経験をお話しいただきました。

話の内容を要約してちょっと紹介しますと、

「入社当時の月給1万円。ペアで10万円のドライバーがたくさん売れるんで驚いた」
「少しでもいい音を出すためにお金を使う(いい意味で)馬鹿な人がたくさんいた」
「10割配当が10年続いた時期もあった」
「ソニー、トリオ、ビクターのOEMで3000円程の小型スピーカーがどんどん売れた時期があった。やがて松下から1000円を切るスピーカーが出て仕事を取られたけど、面白い時代だった」
「今は客なんて何人もいない。うちは富士山の頂点のお客さんを相手にしている」
「趣味が仕事でいいねと言われる。でも楽しいことばかりではない。辛いことだってある」

そして、気になる音の話。

いつかはJBL4343を手に入れたいという私の話を受けて、

「JBLは高音特性。高音域が目立ってその他の音域が隠れてしまう。ジャズならこれでいいのかも知れないが、クラシックは無理」
「JBL4343はオーバホールしても、当時のコーン紙が既にないので、出荷時のJBLらしいキレのある音は望めない」
「金属製品は使うと馴染む。完成直後に比べると、1年使った同じ製品は明らかに音が良くなっている。普通の人にはそうやって聴き比べる機会はないからわからないけどね」
「一方、同じ音でも聴き続けると人は慣れるもの。以前、一関のベイシーに友人3人で訪れた。自分はうるさくてすぐ店を出ようとしたが、友人2人に止められた。ところが30分もすると慣れていた。ちなみに、うるさいのは音量が高いこともあるが、JBLの高音域の特性も原因」
「YLを鳴らしている老舗の某ジャズ喫茶に寄ってみた。スピーカーの話をしたかったんだけど、話の出来るスタッフではなかった」

最後に、新橋の住人氏のところに視聴に行ってから気になっていた質問、「デジタルアンプはどうですか」と尋ねると、

「そのままでは聴けない。電源を変えれば改善する」

面白かった。
スピーカーの製造・販売を生涯の生業にした人なんて、そうそうそこらにいるもんじゃないですよね。
出来ればグラスを傾けながらもっと話をしたかったなあ。

時も過ぎ、帰り際に聞いた話を、私は一生忘れないと思います。
でもここに書くのはやめておきます。

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さてここからはおまけのエピソード。

新橋の住人氏が持ち込んだこの1枚。

Empyrean Isles

Empyrean_isles

このアルバムの存在は不勉強で知らなかったのですが、ジャケを見ると、あれ~!
VSOPが1ホーンになったカルテットでした。

フレディ・ハーバード(tp)
ハービー・ハンコック(p)
ロン・カーター(b)
トニー・ウイリアムス(ds)

VSOPとは。。。

高校時代、フォービートにはまるきっかけになったこの1枚。

Tempest In The Colosseum

Tempest_in_the_colosseum

フレディ・ハーバード(tp)
ウェイン・ショーター(ts)
ハービー・ハンコック(p)
ロン・カーター(b)
トニー・ウイリアムス(ds)

"Red Clay"と"Maiden Voyage"のフレディにやられちゃいました。
それまで、ジャズって言えばナベサダくらいしか知らなかったのに、このアルバムをきっかけに、黄金のクインテットからマイルスにはまっていきました。
(このアルバム、2月に持参して聴いたの覚えてますか?>新橋の住人氏)

さて話を戻して、家に帰ってからあの音を覚えているうちに、当時のハンコックの良く似た面子のアルバムを、我が家の機材で聴き比べてみました。

Maiden Voyage(処女航海)

Maiden_voyage

フレディ・ハーバード(tp)
ジョージ・コールマン(ts)
ハービー・ハンコック(p)
ロン・カーター(b)
トニー・ウイリアムス(ds)

機材はこんなのです。

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驚きました。あれっ、いい音。。。

10畳あまりの小さな部屋ならば、この位の機材でも全く遜色なく聴ける?
高価な機材でいい音を聴いてきて、すっかり刺激を受けて、何が足りないかを考えながら少しづつまたグレードアップしていこうかなと思っていたのですが、、、
あれっ?っと拍子抜け。

うーん、ますますわからないオーディオ道であった。