Now or Never

今でしょ!

カウンターフィット(模造品)?! Introducing... THE BEATLES (US)

前回、キャピトル・レコードが"The First Album by England's Phenomenal Pop Combo"とのキャッチで、実は米国では2枚目となるビートルズのアルバム"Meet The Beatles"を発売したことを記しました。

やはりここは、米国における正真正銘のデビューアルバムについて書かねばなるまい。

Introducing... THE BEATLES (US)  [1964.01.10(1963.07.22説もあり)]

20160501DSC02294.jpg

この雑文を書くにあたって参考にしている「ザ・ビートルズ フォトクロニクル」によれば、、、

20160501DSC02298.jpg

当初大手キャピトル・レコードは、英国アーティストに懐疑的で、ビートルズを袖にしていました。

そこで、マイナーレーベルのヴィージェイ・レコードがビートルズと契約し、米国におけるデビューアルバムを1963年7月22日に発売。

その後、親会社EMIの圧力に加えて、英国で起きていた社会現象が米国にも伝わってきて、とうとうキャピトルがビートルズのレコードの発売に踏み切る。

"I Want To Hold Your Hand"のシングル盤を12月26日に、そしてアルバム"Meet The Beatles"を翌1964年1月20日に販売。

すると、ヴィージェイはこれに乗じて一稼ぎを図って、1月27日に"Introducing... THE BEATLES"の再プレス盤をリリース。

ざっとこんな経緯が記されています。

ところが、今から12年前に、「ザ・ビートルズ '64 BOX」の発売に合わせて出版された中山康樹氏、小川隆夫氏共著のこの本によると、「ビートルズ・アメリカ盤秘話」として、、、

20160501DSC02296.jpg

ヴィージェイは、1963年7月22日に発売を予定していたが、資金繰りに支障を来たし、このアルバムを含めて予定していた計4枚のアルバム発売を全て見送った。

その後、上述の通りキャピトルが乗り出してきたために、おこぼれを頂戴しようと翌1964年1月10日に販売を開始したと記されています。

なお、中山康樹氏はこの秘話について「"秘話度"については保証の限りでない」と書いている。

一体どっちが事実なんだ?

古い話と言えば古い話ではあるが、1960年代の現代アメリカでの出来事です。

しかも、20世紀に社会的にも大きな足跡を残したと言ってもいいグループのことなんですが。

何でレコード発売日が、各種記録から見極められないのか不思議ですねえ・・・

まあどちらにしても、"Meet The Beatles"よりも発売されたのは早いので、米国デビューアルバムであることは確かです。

さて、このレコード、当初は英国1stアルバム"Please Please Me"から、"Please Please Me"と"Ask Me Why"の2曲を除いた12曲で発売されました。

前回書いた通り、アメリカでは収録曲数に応じて印税を払うルールだったため、1枚12曲以内の構成とすることが習慣となっていたからで、同年2月に既にシングルでリリースしていた2曲を、この数合わせのために削ったもの。

当時資金繰りに苦慮していたマイナーレベルの悲しさか、アルバムの出来がイマイチです。

◇ジャケットの写真が裏焼き・・・  いや、それ以前に訴求力のないつまらない写真である (私の主観です^^;)
◇"I Saw Her Standing There"冒頭の印象的なポールの"1,2,3,4!"のカウントが、"3"までカットされていきなり"4!"から始まる (エンジニアのチョンボ)
◇ヴィージェイが発売する権利をもっていない"Love Me Do"と”P.S. I Love You"を収録 (知らんぷり作戦か^^;)

その後、キャピトルからゴラァ!とやられるのを恐れて、"Love Me Do"と"P.S.I Love You"を、当初削った"Please Please Me"と"Ask Me Why"に差し替えたバージョン2を発売しました。

私がもっているのは残念なことに、この差し替えた後のバージョン2です。

20160501DSC02287.jpg

※右の矢印に記載したのは編集元となる英国盤(全曲"Please Please Me"より)

A1. I Saw Her Standing There ←Please Please Me
A2. Misery ←Please Please Me
A3. Anna ←Please Please Me
A4. Chains ←Please Please Me
A5. Boys ←Please Please Me
A6. Ask Me Why ←Please Please Me

20160501DSC02285.jpg

B1. Please Please Me ←Please Please Me
B2. Baby It's You ←Please Please Me
B3. Do You Want To Know A Secret ←Please Please Me
B4. A Taste Of Honey ←Please Please Me
B5. There's A Place ←Please Please Me
B6. Twist And Shout ←Please Please Me

◇リリース : 1963.07.22 or 1964.01.10の2説あり
◇カタログナンバー : VJLP1062
◇モノラル/ステレオ : モノラル
◇レーベル : ヴィージェイ レインボウ・カラー・バンド
 ・両面深溝
 ・ブラケットタイプロゴ
 ・レーベルの盤面表記が「1」「2」でなく「Ⅰ」「Ⅱ」
 ・「Long Playing」「Microgroove」の表記あり
◇トレイル・オフ・エリア情報
 ・マトリクス? : 63-3402-1 / 63-3403-1
 ・プレス工場を表す記号が"ARP"(American Record Pressing Co.,Mich.)
◇ジャケット : ジョージの影あり
◇インナースリーブ : 無地の白紙(オリジナルじゃない?)

ところで、バージョン1は欲しくないのかって?

そりゃもちろん欲しくないと言えば嘘になります。

でも、、、

このアルバムは「カウンターフィット」と呼ばれる模造品がたくさん出回っているので、玉数の少ないバージョン1を高額で購入する気にはなりません。

「カウンターフィット」はなかなか精巧に作られているようなので、この盤だって本物かどうかわかったもんではありません(;^_^A

ただ、この盤、意外や音がいいのは確かです。

20160501DSC02292.jpg

ちなみにこのレコード、1964年にいよいよビートルズがアメリカで大ブレークして、ビルボードのアルバムチャートで9週連続で2位を獲得します。

でも所詮マイナーレベルの哀しさか、その間キャピトルの"Meet The Beatles"が1位を独占し、結局一度も1位に輝くことはありませんでした。