ちょっと前のことですが、将棋の加藤一二三棋士に密着取材したNHKの「ノーナレ」という番組を観ました。
加藤一二三と言えば、前期順位戦でC級2組からの降級が決定。
現在進行中の棋戦(竜王戦6組の昇級者決定戦)で敗北した時点で、現役引退となります。
棋界の事情にすっかり疎くなっていた私にとって、未だに現役を続けていたことに先ず驚きましたが、
「ひふみん」なんて愛称で呼ばれ、将棋に特別詳しくない人達からも親しまれている存在となっていることには驚愕しました。
今は昔、まだこんな棋士たちがA級で活躍していた頃に、
中原誠名人を破って名人位を奪取。
持将棋に千日手指し直しで、七番勝負の対局が計10局に及ぶ大熱戦でした。
常勝中原誠が破れたこのシリーズは将棋の歴史の転換期になると、この本を購入したものです。
しかし、こうしてようやく手に入れた名人の座は、翌年谷川浩司に奪われ僅か1期で終わります。
十六世名人中原誠と十七世名人谷川浩司、二代の永世名人のつなぎ役。
これが、私が将棋に夢中になっていた頃の加藤一二三です。
さて、この頃の加藤一二三評。
どちらかと言えばネガティブだった印象があります。
これは私が当時受けた印象で、もしかしたら思い違いもあるかも知れませんが、、、
当時は将棋の技術だけでなく人間的にも大きく評価されていた第一人者の「自然流」中原誠が棋界に君臨し、そのライバルの一番手と言われたのが米長邦雄だったと思います。
米長邦雄は、まるで棋界の聖人のような存在だった中原誠に比べ、人間味に溢れてユーモアを解する棋士として親しまれていました。
そして、ライバルの中原誠に対しては明らかに一目置いていましたが、この方はどうも加藤一二三という少々変わった人を余りお気に召していなかったようでした。
加藤一二三を評するに、将棋の内容はともかくとして、その振る舞いや生活ぶりを、あたかも「空気を読まない変わり者」と言わんばかりの言い方をよくされていた記憶があります。
そして、そのためってわけでもないんでしょうが、中原誠や米長邦雄のファンは数多いましたが、加藤一二三がお気に入りだっていうファンにはお目にかかったことがなかったです。
当時のそんな印象が残っていたため、棋力も衰え第一線から外れた今になって、加藤一二三がファンの間で人気者になっていることに驚いたわけです。
思えば、あの頃の後に棋界に起きたいろいろな出来事を考えると、加藤一二三という人がいかにも純粋で、当時棋界の主流だった彼ら俗物と仲間として交わうこともなかったんだろうなと、何か納得するのであります。
そして、そんなピュアなところが、今は逆に親近感をもってファンから親しまれているんだと思いました。