Now or Never

今でしょ!

安楽マニア

この言葉を覚えたのは小学生高学年の頃。

趣味の世界で普通に使われている言葉と思いきや、ネットで検索するとヒットするのは鉄道模型の話題ばかりです。

安楽マニアとは、、、

「模型の製作に精を出すことなく、ただお気楽に模型を眺めて楽しむだけのファン」

のことと個人的に解釈していますが、概ね当たっていると思います。


この記事が掲載されたのは、機芸出版社が刊行した「たのしい鉄道模型」。   
これは、同社が発行している月刊誌「鉄道模型趣味」の過去記事を集めた「TMS特集シリーズ」の16刊目となります。
※「TMS」は「鉄道模型趣味」の略

この「安楽マニアもまた楽し」という記事は、「鉄道模型趣味」誌の昭和35年9月号が初掲です。
小学生時代にこれを目にした私は、「安楽マニアになってはいけない」って気持ちを抱いたことだけは覚えています。

しかし、今読み返してみると、一体どこまで理解できていたのか疑問です。

軽く記事の内容を紹介すると

先ず冒頭で、遂に安楽マニアの線をうろつくようになった筆者の近況を、「露営の歌」(軍歌です^^;)の替え歌で自虐的に紹介します。

「買って来るぞと気負いたち
 誓って街へ出たけれど
 ついついフラリとビアホール
 一ぱい二はいが又三ばい
 到々台車は又来月」

もしかすると、小学生の私は、お酒が好きでついこんな失敗をしちゃう大人の世界にどこか憧れたのかも知れません。
気が付けば、自分もこうなってましたから(笑)

記事の中では、かつては筆者だって勉強もしないで模型作りに没頭していた時代もあったけど、、、

「そして煙草をおぼえ、酒の味を知り、今ではテンダ迄引っ張り、どちらかと云うとテンダドライブと云った状態なので尚更重荷、こんな調子ですから疲れなおしにちょいと一杯と云ってはポケットマネーがビールになり、たまの日曜日には粗悪炭を喰わない為にも女房へのサービスが必要になるので製作は遅々として進まず、ついつい夢を追うペーパープランナーへと傾いてしまうと云う訳です」

と言い訳がましく呟きます。

ちなみに、前半部分は何を言っているかわかり辛いと思います。
「テンダー」っていうのは、蒸気機関車の後ろに連結されている炭水車のこと。

矢印の個所。機関車を動かすための石炭と水が入っている

自分を機関車本体に擬えて、結婚して奥さんも牽引することになったことを例えています。
(今なら「妻が旦那の負担や従属物みたいでけしからん」とか炎上しそう^^;)

そうなんです。
昭和の時代の鉄道模型の趣味人の間では、「テンダー」はパートナーの隠語だったんです。

「テンダドライブ」は更に難易度が上がります(笑)

普通、テンダーの付いた蒸気機関車の模型は、動力源であるモーターを本体側に取り付けます。
テンダーはただ牽引されるだけ。
(だから「今ではテンダ迄引っ張り」となるわけです)

しかし、中にはサイズ的に本体内にモーターを取り付けるのが難しい機関車もあります。
この場合、苦肉の策として、モーターをテンダーに仕込みます。
これが「テンダードライブ」。

即ち、一見自分が奥さんを引っ張っているように見えるけど、実は奥さんに操られていて稼ぎを自由に使えないことを比喩しているんです。

この後、記事は「こんなのを作ってみたいんだ」と筆者が妄想する車両たちを文と達者なイラストで紹介して、

「この辺でそろそろ重いしりを上げないと彼女等は永遠に日の目を見ないで終って了うかも知れません」
「棚の上からは、安物のウイスキーが勝ち誇ったように見下ろしています。それではいずれ又」

と結ばれています。

やっぱりそうだ。
小学生の私は、初めて手にした鉄道模型の本でこの記事を読んでしまったがために、こんな大人の生活に憧れてしまったんだ、と確信しました(笑)

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さて
長々とその昔の記事を紹介して、何が言いたかったって言うと、、、

私もそろそろ模型作りを始めないと、一生安楽マニアで終わってしまうと危機感が湧いてきました。

先ずは、買ってきて積んであったペーパーキットを組み立ててみようと。

これなら簡単なプラモデルを作る感覚で作れそうです。

上手く作れなくても駄目なりに形にだけはしようと思います。

乞うご期待!